2017年11月21日火曜日

どうぶつの森

ぴぴぴっぴぴぴっ
目覚ましが鳴ったのを急いで止め、そろそろと布団から出る。
リビングに移動し、ゲームキューブの灰色のスイッチを押す。
排気の音が気になって、なんとなく布をかけて音を消す。
寝室で物音が聞こえた気がして僕は息を殺して身を潜めた。

ブラウン管テレビの画面でゲームキューブのロゴが転がり、そしてタイトルが表示される。
「どうぶつの森+」
時刻は午前4時、小学生の夏休み、僕はどうぶつの森に激はまりしていた。


親が起きてくるまでの2時間の間に、カブトムシやクワガタをとりまくる。
そう意気込んで、僕は毎朝音を限界まで絞ったブラウン管の前に座り込んでいた。
親が起きて来たら言うセリフは決まっている。
「ちょうど10分くらい前に起きて暇だったから」
当時の僕は借金を返すの躍起になる、健気な小学生だった。

ゲームキューブの時間をいじれると知ったのはそれから数年後のことであった。
僕は時間をいじりカブトムシをとった。クワガタをとった。オオクワガタが高かった。
しかし、不正には代償が伴う。
時間を戻した僕のところに一通の手紙が来ていた。
それは、僕の一番のお気に入り住人だったニコバンの引越しの連絡だった。
僕らはあんなに仲良くしていたのに、ニコバンは出て行ってしまった。
もう会うことは出来ないんだ。
僕は自分の過ちの大きさを嘆き、どうぶつの森は本棚奥深くに封印された。

そして今日、僕は十数年ぶりにiPhoneでどうぶつの森を始めた。
かつて別れた友人を探すために。

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