2017年12月4日月曜日

名峰マウンテン

名古屋には山がある。
その名を喫茶マウンテンという。

大学から約一駅と少々のおつりを歩くと看板が見えてくる。
雪の残る山に赤い文字で店の名前が書かれている。
駐車場には千葉や神戸など日本各地から来た車が停められている。
ここは名古屋の名峰なのだ。

ある人は「食への冒涜だ」と憤り、ある人は「普通のメニューは普通」と意味のわからぬ事を言う。僕にとってここはレジャーでありスポーツであり、まさに山だと思っている。

名古屋に住む人間のほとんどが知っていると言っても過言ではない(かもしれない)、この店の看板メニューこそがあの悪名高き「小倉抹茶スパ」である。
小倉は美味い。小倉抹茶も明らかに美味いだろう。だが小倉抹茶スパはどう考えても美味しくはない。そして実際美味しくはない。
抹茶の「粉」を混ぜ込んだであろう熱々のパスタ。
その上に無残にもかけられた生クリームとあんこ。
そして何故か更にその上に乗せられた果物。
一見美味しそうには見えないのだが、食べてみると驚くことに美味しくない。
ただ不思議と(ぎりぎり)食べられないことはない。
そのため残す事が罪悪感となり、人はなんとかこれを食べきろうとする。
これを人は「登山」と呼ぶ。

正直に告白すると、僕は昔からこの山に憧れていた。
その名前を初めて聞いた時、僕は「奇食の館」というホームページに辿り着いた。そこに載せられていた百鬼夜行の皿々に僕は魅せられた。
そして大学に入った僕は、晴れてマウンテンに連れて行かれる運びとなった。遭難しかけながらも山を登り切った。山頂から見た景色は別に綺麗ではなかったし、晴れやかな気分でもなく、むしろ気分は悪かった。

それからも何度も僕は山を登った。
何故、そんなに辛い思いをしてまで山を登るのか。
「そこに山があるからだ」
そう先人は言葉を残した。

だが、時が流れるにつれ僕は山に登る事が減った。
そしていつしか、僕は山に登らなくなった。

悩み考えた
「何故山に登らないのだろう」
いや、むしろ
「何故山に登っていたのだろう」
そして気づいたのだ。
僕は見たかったのだ。
山に登った事がない者たちが苦しみながら登山をする姿を。

というわけで今度誰かを連れてマウンテンに行きたい。
大人しく連れて行かれそうな人間を探している。

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