2017年12月12日火曜日

手記「多重夢について」

--どうやらここのコンピュータは正常に動くようだ
--メールボックスにメールが届いている
--何も書かれていないが、ファイルが添付されている

----添付ファイルを開きますか?
--open

文書ファイル : 手記「多重夢について」
作成者 不明 作成年 不明

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この手記を読んでいるということは、僕は夢からの脱出に成功したということだろうか。
それともただこのメールだけが……そうでないと願いたい。
ここに記すのは、僕が多重夢を何度も繰り返す中で編み出した一つの答えである。
もしかすると、これは一つの対抗策になるかもしれない。あるいは……

夢を繰り返す中で気がついたのはある相同性であった。
僕がこの世界……おそらくは僕の夢の中で起き上がり、行動を取ろうとするたびに世界はリセットされ、僕は再び初めの地点……つまりは布団へと戻される。
この状況を単純化した時、僕は行動を制限されているということになるだろう。
これは体の自由を奪われた状態である。
これはいわゆる金縛りという現象と似通っており、一種の相同性がここに見出された。

ならば、この多重夢を抜けるには、金縛りを解く必要がある。
夢の中で金縛りになっているのか、それとも現実で金縛りになっているのか、それは現時点……このメールを書いている時点で明確な答えを出すことはできない。
しかし、仮に夢の中で金縛りになっていたとしても、睡眠中の体を自在に動かすことはできない。そのため今動けない状態が夢か現実かということは大きな影響を及ぼさないだろう。

まず、なすべきは自身の状況の把握である。
すぐに起き上がろうとせずに、身体に意識を向けよ。
そして身体の感覚に違和感があったならば、無理に身体を動かしてはならない。
少しずつ、あくまで少しずつ動くべきだ。まずは腕……いや指先からだ。

この意識のコントロールが夢と現実をパンフォーカスにしてくれる物だと期待したい。
これが上手くいけば……

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手記はここで終わっている。

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