歳をとるにつれて怖いものが減った。
夕闇の街が怖かった。
人がどこか遠い存在に思えるからだった。人の顔が見知らぬものに見えるからだった。
押入れの暗さが怖かった。
知らない場所に繋がってるように感じるからだった。おしいれのぼうけんを読んだからだった。
夜中に一人で起きて行く便所が怖かった。
なんだかこのまま一人きりになってしまう気がするからだった。
僕が恐れていたものはもういなくなってしまったのだろうか。
いや、まだいる。どこにでもいる。
ビルの柱の暗がりに、工事現場のシートの隙間に、点滅する蛍光灯の下に。
路地に佇む人影に、木葉の痛いほどの静けさの中に、
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