2017年12月2日土曜日

夜明け前の藍色

初めて徹夜をしたのはいつだろうか。
いや夜通し遊んだ時は、だいたい明け方に帰宅した後に寝てしまう。もしかすると完璧に文句のつけようのない徹夜というのを、僕はこれまでしたことがないかもしれない。

始発の電車に乗る。
始発というのは曲者で、早くホームに着きすぎると電車が来るまでの間が辛い。寝ずに夜を越した後の待ち時間は本当に辛く、この時期はさらに寒さに凍える羽目になる。
かといってギリギリの電車を狙って外すと、次の電車まで早朝のすかすかなダイヤを恨みながらやはり凍えることになる。
そのため、大抵は始発に向かって軽く小走りをしなければならなくなる。すでに停止寸前の体に鞭を打つと、膝や腰の関節がきしんでぎこぎこと音がする。

始発の電車にはこれから活動を始める眠そうな人と、これから活動を終える眠そうな人がいる。見分け方は、後者の方が顔に滲む後悔の色が濃い。そして髪に寒サバくらい脂が乗っている。
座れば眠りそうになり、立っていれば疲れで目眩がする。
この時ばかりは電車に乗っている時間がとても辛い。

ただ一方でこの時間に外を歩くのが僕は結構好きだ。
夜明けと夕方は一見すると似ているが、実のところ大きく違う。
空は黒に近い深い藍色から、明度を増した鮮やかな紺色へと変わっていく。
この時の空の色は空気と同じように夕方よりもずっと澄んでいると思う。

空はどんどん明るくなっていくが、街灯は中々明かりを落とさない。
そのため明け方には明るい空と白い街灯の光が同居する。

街はすんと静かで、新聞を届ける音が遠くからでも聞こえる。
鳥の声、早起きした誰かの立てた物音、遠くでまばらに車が走る音。

そんな中を疲れがまとわりついた体で歩くと、少しずつ鉛のような疲れが幾分か心地よい疲れへと清められていく気がする。

帰ったら熱いシャワーを浴びよう。
そう思いながら、一日が始まる街を歩く。

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