2018年2月8日木曜日

生物時計の話をしよう

ここ数日と昔の話ばかりしていてジジイだと思われそうなので、せっかくだし今やっている研究の話をする。

2017年のノーベル医学生理学賞に選ばれた科学者をご存知だろうか。
彼らの功績、それは「時計遺伝子の発見」である。

僕らは概日リズム(サーカディアンリズム)というものに従って生きている。
難しい言葉に聞こえるが、つまり「朝に起きて、夜に寝る」というようなリズムである。
暗闇の中で生活したとしても、生活リズムは約一日に保たれる。
そのため、生物は光に頼らなくても約一日のリズムを体の中で「測っている」ことが分かる。体の中に時計があるのである。

この「約一日」というのを英語で「サーカディアン・リズム」、日本語では概そ(おおよそ)を用いて「概日リズム」と呼んでいるのである。
そして体の中で一日の長さを測っている時計を「生物時計」と呼ぶのだ。

ある研究者がハエを飼育していた。
ハエは飼いやすいし、すぐに卵を生むので遺伝の研究にはよく用いられる。
何世代もハエを飼育していくと、突然変異を起こす個体がちらほら出てくる。

ハエにもリズムがある、というと不思議に思われるかもしれないが、ハエも夜にはあまり運動をしなくなる。これが僕らの「睡眠」に当たるとする。

さて、ハエも真っ暗な場所で飼育すると、人間などと同じように約一日のリズムで生活をする。ところが、飼育していたハエの中に、そのリズムがめちゃくちゃになっている個体がいた。

そのハエを育てて増やし、生活リズムがめちゃくちゃなハエの系統を作った。
まるで大学生のようである。

ここでさっき言った話を思い出して欲しい。
「生物は体の中に時計を持っている」と言ったが、では何がその時計として働いているかを調べるにはどうすればよいだろうか?
そう、リズムがめちゃくちゃなハエを調べ、「何が壊れているか」を調べれば良い。
その壊れているものが、「時計の部品」なのだ。
(こうやって突然変異個体から原因の遺伝子を探す方法をフォワード・ジェネティクスという)

そうして生活リズムがめちゃくちゃなハエを調べた結果、一つの遺伝子が壊れていることが発見された。このハエがperiod(期間)と呼ばれていたため、この遺伝子をPeriod(Per)と呼ぶことにした。
この遺伝子を発見した研究者が今回のノーベル賞受賞者である。


さて、今では更に幾つか遺伝子が見つかり「根幹」の部分が明らかになっている。
哺乳類ではPER(ピリオド)、CRY(クリプトクローム)、CLOCK(クロック)、BMAL1(ビーマルワン)の四つが根幹をなしている。

BMAL1とCLOCKが増える、量が増えてくるとPERとCRYが遅れて増える。
PERとCRYはBMAL1とCLOCKが増えるのを止める。
するとBMAL1とCLOCKの量が減るのでPERとCRYも増えなくなる。
するとまたBMAL1とCLOCKが増え始める。

このループが約24時間なのだ。
それぞれのタンパク質は他の色々なタンパク質が増えるのを助けたり邪魔したりする。
これによって体全体が24時間周期で変動しているのである。

僕の研究は詳しくは言えない(?)が、このBMAL1の機能について調べている。
というか調べていく予定だ。調べられたらいいなぁ……

また時計の話で面白い続報があれば紹介するかもしれない。
続報を待て!

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