電車が走っている。
僕は電車に乗っている。
何か理由は分からないが、早く家に帰りたかった。
あまり遅くなると家族も心配する、そんな気がした。
ふと窓の外を見ると家々が立ち並んでいるのが見える。
おかしい。
僕は地下鉄に乗ったはずだ。
僕の家には地下鉄でしか帰れない。
しかし気がつくと電車は地上を走っている。
なんだか前もこんな事があった気がする。
ここはどこなんだろう。どこで間違えた…いや、とにかく降りなければ。
そう思って次の駅で電車を降りた。
路線図を見てみるも、皆目見当もつかない。
少なくとも最寄駅は看板のどこにも見当たらなかった。
仕方がない、誰かに聞こう。
駅員室に向かう。
改札の横の駅員室にはセーラー服を着た二人の女子高生が立っていた。
どうやらこの駅の駅員は女子高生らしい。
ここはどこなのか。何線に乗ってしまったのか。
色々と聞いてみるが彼女たちの返答は要領を得ない。
しかし自宅の最寄駅の名前を出すと、二人は急に笑い出した。
二人によればこの路線では僕の家には帰れないらしい。
どこで間違えたのか分からないが帰れないらしいのだ。
「道路を真っ直ぐ行くと地下鉄の入口がある」らしい。
そこからは一本だと教わった。
僕は礼を言って見知らぬ駅を去る。
真っ直ぐ進んでいたはずだが、気がつくとどこかの学校の中にいた。
建物の中ではない。敷地内だ。
それでも真っ直ぐ進み続ける。
早く帰りたい。
すると、ここの生徒たちなのだろう。
制服を着た若い男女が壁際によって何やら騒いでいる。
彼らの見る方向は僕が進むべき方向で、自然と僕もそちらを向く。
女装の列だ。
女装をした男子学生が列になってこちらへ歩いてくる。
それを見て壁際の学生達が盛り上がる。
列の最後から、がたいの良い男が(女装して)堂々と歩いてくる。
学生達は口々に「本物、本物」と叫んで彼を迎え入れる。
僕は彼らを尻目に先に進んだ。
途中で不良風の学生に捕まりそうになったが、振り切って逃げた。
学校の門が見える。
ようやく出られそうだ。
そこは古い町だった。
町は夕方で古びた家々の間を自転車が走って行く。
一体地下鉄の入口はどこにあるんだろう。
団地の周りにいた主婦に声をかける。
訝しげな主婦たちに地下鉄の場所を聞いたが、「越してきたばかり」と言って教えてもらえなかった。
公園に行くと、自転車に乗った小学生がやってきた。
「地下鉄の入口だろ、あれはゴミ屋敷の中にあるんだぜ」
彼に案内してもらい、ゴミ屋敷を目指すことになった。
公園の周りにはパトカーが停まっていて、警官が聞き込みをしている。
「パズル事件の話が出来たらいいんだけど」
少年はそう言って残念そうにしていた。
ここから僕はゴミ屋敷の中を探検することになったのだが、そこはちょっとばかりホラーで思い出したくないのでここで筆を置く。
夕焼けの町は綺麗でとても恐ろしかった。
子供の頃に歩いた夕暮れの町に似ていた。
ちょっと路地に入ったりしたら、もう戻ってこれないような気がした。
そんな夕暮れ町に似ていた。
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