2018年1月11日木曜日

忘れ物センター④

忘れ物センター③→

「3. エレベーター 1+3-3-1」
通路を抜けた先に古びたエレベータがあった。最初に言ったようなレトロな奴だ。

誰かがドアに手をかけたと同時に、俺は右の壁のドアを開け中に入った。
転がり込むように、それでいて音をたてないように細心の注意で。
廊下を誰かが歩く音が聞こえたが、音は小さくなってゆき、やがて聞こえなくなった。

ほとんど目では見えなかったが、薄暗い廊下の隅の、層をなすチラシの下に隠れるようにしてそのドアはあった。いや、実際に隠されていたのかもしれない。
俺も廊下の隅に身を寄せ、壁をなでまわさなかったら扉の存在に絶対に気づかなかった。
突然の遭遇(未遂)が逆に功を奏した。
それに忘れ物センターなるものが実際にあったとして、図書館職員全員がそのことを知っているとは考えづらい。聞く限りだいぶ捻じれた組織のようだし。

エレベーターはすでに俺のいる階に止まっていた。乗り込む。
押し込みボタン式で、壁は木で出来ていた。かなり昭和の匂いがする。
ドアの上には階数を示す文字盤がついていて、矢印は「1」を指していた。
地下から入ったが、ここは1階ということになっているらしい。

山岸からの指令書を見る。
0か、と思ったが、それでは意味が分からない。
しばらく考えたが、素直に順番通りに押してみる事にした。
1のボタンを押し込み、その状態で3のボタンを押し込む。
マイナス、というのはおそらくボタンを戻せ、ということだろう。
3を押すとボタンはまた飛び出る。そして次に1を押した。

......特に何も起こらない。
間違えたか?
そうしているうちにエレベーターのドアが閉まった。
再びボタンを押してみようと思ったその時だった。

何もボタンも押されていないエレベーターが動き出した。


忘れ物センター⑤へ

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