忘れ物センター④→
エレベーターは下へと動いているようだった。
しかし、扉の上の文字盤は1階を指したままである。
...... どれくらい時間がたっただろうか。
ゴトッ、という音と共にエレベーターが停まった。
ずっと乗っていたような気もするし、さっき扉が閉じたばかりのような気もした。
エレベータの扉が開く。
そこは想像していたよりも......ずっと小綺麗な場所だった。
てっきり暗い廊下でもまた続いているのだろうと思っていただけに、明るい小部屋を見て少しほっとした半面、居を突かれた感じがした。
赤いカーペットの床、白い壁紙、奥の壁には木でできたドアが見える。
そして、その脇にはカウンターと何枚ものディスプレイが備え付けられていて、さながら映画館のチケット売り場といった趣だ。
その中で一際目を引いたのがカウンターに立てかけられた木製の古い看板で、墨汁で達筆に「忘れ物センター」と書かれていた。
「前の受付で使われていたやつなんですよ」
ふいに声がする。
びくっとして顔を上げると、いつの間にかカウンターの向こう側に女性が立っている。
「と言っても場所が変わったわけではないんですけど。あっ、それだと改装した、って言い方のが正しいかもしれませんね」
彼女は自ら納得したように続ける。
紺のジャケットの胸に銀の名札がついており、「織部」と刻印されていた。
「えっと人の紹介で...」
「山岸さんの紹介ですね、さっき電話をいただきました。財布の件ですよねー」
待ってました、という感じで織部女史がキーボードをぱちぱちと叩く。
するとカウンターの後ろのディスプレイに俺の名前と共に、「G8.46.2」というコードが表示された。
「こちらに保管されています。案内しますよ」
というと、彼女はドアを開けてさっさと中に入っていってしまった。
置いていかれてはことだと思い、追いかけるようについていった。
-------
ドアの向こうに入った途端、俺は言葉を失った。
呆気に取られた、というのはこういう事を言うのだろう。
聡明な俺の顔も、この時ばかりは格別に阿呆と化していた。
そこは地下に空けられた巨大な空間だった。
配送センターとか、そういうのをもっと巨大にした感じで、入口からは端が見えなかった。
先程の受付とは打って変わって、四方の壁はコンクリートが剥き出し。そして、どこまでもドアが無数に並んでいた。それが上下に層になった通路沿いに、何本も走っている。
「どうです。なかなかすごいでしょう」
女史が誇らしげに言う。ちゃんと待っていてくれたようだ。
「これは……上手く考えがまとまらないけれど、どうなってるんです?」
俺は混乱が収まらないまま質問する。
「話すと長くなるので、説明しながら行きましょうか。コードは……G8ですね。こっちです」
そう言うと織部女史は歩き出した。
------
壁沿いの扉には一つ一つ番号が振られていた。
「G8は入口から近いので歩いて行けて楽なんですけど。あっ、でも遠くの場合は遠くの場合で別の方法があるから安心してください」
それも気になるが、もっと本質的な問題を解決したかったため、織部女史の「セグウェイ導入を却下された話」を遮り質問をする。
「あの、そもそも忘れ物センターとは何なんですか?」
女史が少し困ったような顔する。
しまった、本質的な質問はまずかったか?
「ここが何か……ですか。なかなか哲学的な質問ですね。忙しい時代に残された最後のユートピアの一つとか……」
そういうことではない。
「あ、ここの役割ですか?てっきりもう山岸さんから聞いているのかと思いました」
「山岸の話だと、忘れ物や落し物を(勝手に)回収して保管しているとか」
「だいたいその通りですよ。この大きな施設には山というほどに忘れ物が保管されているんです。私たちのずっと上の先達が始めた仕事を、今は私たちが引き継いで行なっているんです」
女史はまた誇らしげだった。
どうやらここでの仕事(?)に誇りを持っているらしい。
「でも、なんでそんな活動を?第一、こんな場所まで忘れ物を取りにくる人なんていないでしょう」
俺は山岸から聞いた時から不思議に思っていた事を聞いてみた。
取りに来れないならば、置き引きと変わらないではないか。
拾得物の着服ではないか。
女史はやれやれという顔をして
「忘れ物っていうのはですね...これも話すと長くなるんですが...まぁ、必ずしもその人の手元に戻るのが良いとは限らない物なんですよ」
と言うと、一つのドアの前に立ち「ここがG8です。入りましょう」と言いドアを開けた。
忘れ物センター⑥へ
2018年1月13日土曜日
2018年1月11日木曜日
忘れ物センター④
忘れ物センター③→
「3. エレベーター 1+3-3-1」
通路を抜けた先に古びたエレベータがあった。最初に言ったようなレトロな奴だ。
誰かがドアに手をかけたと同時に、俺は右の壁のドアを開け中に入った。
転がり込むように、それでいて音をたてないように細心の注意で。
廊下を誰かが歩く音が聞こえたが、音は小さくなってゆき、やがて聞こえなくなった。
ほとんど目では見えなかったが、薄暗い廊下の隅の、層をなすチラシの下に隠れるようにしてそのドアはあった。いや、実際に隠されていたのかもしれない。
俺も廊下の隅に身を寄せ、壁をなでまわさなかったら扉の存在に絶対に気づかなかった。
突然の遭遇(未遂)が逆に功を奏した。
それに忘れ物センターなるものが実際にあったとして、図書館職員全員がそのことを知っているとは考えづらい。聞く限りだいぶ捻じれた組織のようだし。
エレベーターはすでに俺のいる階に止まっていた。乗り込む。
押し込みボタン式で、壁は木で出来ていた。かなり昭和の匂いがする。
ドアの上には階数を示す文字盤がついていて、矢印は「1」を指していた。
地下から入ったが、ここは1階ということになっているらしい。
山岸からの指令書を見る。
0か、と思ったが、それでは意味が分からない。
しばらく考えたが、素直に順番通りに押してみる事にした。
1のボタンを押し込み、その状態で3のボタンを押し込む。
マイナス、というのはおそらくボタンを戻せ、ということだろう。
3を押すとボタンはまた飛び出る。そして次に1を押した。
......特に何も起こらない。
間違えたか?
そうしているうちにエレベーターのドアが閉まった。
再びボタンを押してみようと思ったその時だった。
何もボタンも押されていないエレベーターが動き出した。
忘れ物センター⑤へ
「3. エレベーター 1+3-3-1」
通路を抜けた先に古びたエレベータがあった。最初に言ったようなレトロな奴だ。
誰かがドアに手をかけたと同時に、俺は右の壁のドアを開け中に入った。
転がり込むように、それでいて音をたてないように細心の注意で。
廊下を誰かが歩く音が聞こえたが、音は小さくなってゆき、やがて聞こえなくなった。
ほとんど目では見えなかったが、薄暗い廊下の隅の、層をなすチラシの下に隠れるようにしてそのドアはあった。いや、実際に隠されていたのかもしれない。
俺も廊下の隅に身を寄せ、壁をなでまわさなかったら扉の存在に絶対に気づかなかった。
突然の遭遇(未遂)が逆に功を奏した。
それに忘れ物センターなるものが実際にあったとして、図書館職員全員がそのことを知っているとは考えづらい。聞く限りだいぶ捻じれた組織のようだし。
エレベーターはすでに俺のいる階に止まっていた。乗り込む。
押し込みボタン式で、壁は木で出来ていた。かなり昭和の匂いがする。
ドアの上には階数を示す文字盤がついていて、矢印は「1」を指していた。
地下から入ったが、ここは1階ということになっているらしい。
山岸からの指令書を見る。
0か、と思ったが、それでは意味が分からない。
しばらく考えたが、素直に順番通りに押してみる事にした。
1のボタンを押し込み、その状態で3のボタンを押し込む。
マイナス、というのはおそらくボタンを戻せ、ということだろう。
3を押すとボタンはまた飛び出る。そして次に1を押した。
......特に何も起こらない。
間違えたか?
そうしているうちにエレベーターのドアが閉まった。
再びボタンを押してみようと思ったその時だった。
何もボタンも押されていないエレベーターが動き出した。
忘れ物センター⑤へ
2018年1月10日水曜日
忘れ物センター③
忘れ物センター②→
古いエレベーターというのは実に情緒がある。
階数のボタンが丸い押し込み式だったりすれば、なおさらである。
乗っていると、「吊られている」ということを強く感じるものだ。
しかし、そんなエレベーターはほとんど残っていないものだ。
近くで見た事はないし、ましてや学内の、しかも図書館に残っているとは信じられない。
実際、実物を見るまで信じていなかった。
山岸からのメモはまさに殴り書きといった感じであり、何故か指令書となっていた。
「1.図書館の地下入口。人に見られるな」
図書館の地下入口は駐輪場の奥にあった。
関係者以外立入禁止、とは明示されていなかったが、明示せずとも分かれという雰囲気に満ち満ちていた。おそらくは搬出・搬入用であろう。
山と積まれたダンボールや紙束の間を抜けるように扉に手をかける。
ノブは重かったが、鍵はかかっていないようだった。
やおら、後方から声が聞こえる。紙束の陰にしゃがみ隠れる。
二人組の男がなにやら騒ぎながら自転車を置いて去っていった。
再びドアに手をかける、脚に力を入れドアを引いた。
「2.右左右。同上」
コマンド入力かと思ったが、どうやら道順らしい。
同上という事は、やはり見つかるな、ということだろう。
こんな辺鄙な扉から入ってきているのだ、迷ったという言い訳も確かにしづらい。
そもそも財布を探しているだけだったはずだが、もはや今の姿はさほど泥棒と違いがないのではないだろうか。
疑問は尽きなかったが、とりあえずコンクリート張りの通路を右へと入る。
コマンド表通りに次は左。
心配しなくても、人の気配はほとんどない。
が、ここで困った。最後の右に相当する道が見当たらない。
左には幾つかドアがついているのだが、右は壁が続くばかりだ。
そして廊下の端も壁しかない。
(山岸のコマンド入力間違いだろうか)
右の壁には古びたチラシが無数に貼られている。いつの物だろうか。暗がりの中、擦り切れた文字を解読するのは困難であったが、かろうじて「闘争」と読めた。
その時だった。
がたん。
音がした。
気のせいだろうか。耳をすます。
がたん
誰かいる。
左のドアの向こうだ。
自分の心拍数が急に上がったのが分かった。
音は少しずつ大きくなる。
……近づいてきている。
俺はドアから少しでも離れようと、廊下の突き当たりへと進む。
音の主は、もうドアの向こうにいるようだった。
がたん
ドアに手がかけられた気配がした。
忘れ物センター④へ
古いエレベーターというのは実に情緒がある。
階数のボタンが丸い押し込み式だったりすれば、なおさらである。
乗っていると、「吊られている」ということを強く感じるものだ。
しかし、そんなエレベーターはほとんど残っていないものだ。
近くで見た事はないし、ましてや学内の、しかも図書館に残っているとは信じられない。
実際、実物を見るまで信じていなかった。
山岸からのメモはまさに殴り書きといった感じであり、何故か指令書となっていた。
「1.図書館の地下入口。人に見られるな」
図書館の地下入口は駐輪場の奥にあった。
関係者以外立入禁止、とは明示されていなかったが、明示せずとも分かれという雰囲気に満ち満ちていた。おそらくは搬出・搬入用であろう。
山と積まれたダンボールや紙束の間を抜けるように扉に手をかける。
ノブは重かったが、鍵はかかっていないようだった。
やおら、後方から声が聞こえる。紙束の陰にしゃがみ隠れる。
二人組の男がなにやら騒ぎながら自転車を置いて去っていった。
再びドアに手をかける、脚に力を入れドアを引いた。
「2.右左右。同上」
コマンド入力かと思ったが、どうやら道順らしい。
同上という事は、やはり見つかるな、ということだろう。
こんな辺鄙な扉から入ってきているのだ、迷ったという言い訳も確かにしづらい。
そもそも財布を探しているだけだったはずだが、もはや今の姿はさほど泥棒と違いがないのではないだろうか。
疑問は尽きなかったが、とりあえずコンクリート張りの通路を右へと入る。
コマンド表通りに次は左。
心配しなくても、人の気配はほとんどない。
が、ここで困った。最後の右に相当する道が見当たらない。
左には幾つかドアがついているのだが、右は壁が続くばかりだ。
そして廊下の端も壁しかない。
(山岸のコマンド入力間違いだろうか)
右の壁には古びたチラシが無数に貼られている。いつの物だろうか。暗がりの中、擦り切れた文字を解読するのは困難であったが、かろうじて「闘争」と読めた。
その時だった。
がたん。
音がした。
気のせいだろうか。耳をすます。
がたん
誰かいる。
左のドアの向こうだ。
自分の心拍数が急に上がったのが分かった。
音は少しずつ大きくなる。
……近づいてきている。
俺はドアから少しでも離れようと、廊下の突き当たりへと進む。
音の主は、もうドアの向こうにいるようだった。
がたん
ドアに手がかけられた気配がした。
忘れ物センター④へ
2018年1月9日火曜日
忘れ物センター②
忘れ物センター①→
「忘れ物や落し物の扱いについてどう思う」
俺が少し落ち着いたのを見て、山岸は近くのベンチに腰掛けた。
手にはまだ木の棒が握られている。初期装備か。
「『どう、と言われても』という顔をしているな。財布ならまだ分からないが、ほとんどの物は適当に段ボール箱にでも詰められて事務室の前に放置してあるだろう。持っていく時にも特に確認もされやしない。『どうせ取りに来ない』と考えているんだろうな。落し物だから、仮に誰かが持ち出しても苦情の入るわけでもない」
山岸はビニール袋から緑茶のペットボトルを出した。
木の棒を持ったまま器用にフタを開ける。
「そんな状態に憤った人間がかつて立ち上げたのが『忘れ物センター』だよ。だが、今やその存在を知る者は学内にはほとんどいない。にも関わらず、忘れ物・落し物の収集活動はずっと続けられていてね。おかげでセンターが出来る前よりも、落し物が見つからないことが増えたというのだから、困ったものだ」
山岸はやれやれた言った感じで肩をすくめる。
「やれやれじゃない。とにかくそんなセンターがあるっていうなら、とりあえずそこに連れて行ってくれ」
「まぁ、そう焦るな。そこにあるなら、まず誰かに持ち出されることはない。落し物としてきちんと管理してくれているはずだ。ただ管理はするが連絡はしてくれないのが欠点なんだけどね」
それじゃあ置き引きだろ!、という言葉が喉まで出かかったがぐっとこらえた。
「ただ、残念なことにこの後用事がある。これをやろう」
そういうと山岸はリング式のメモ帳に何かを書き殴ると、一枚ちぎってこちらに渡した。
忘れ物センター③へ
「忘れ物や落し物の扱いについてどう思う」
俺が少し落ち着いたのを見て、山岸は近くのベンチに腰掛けた。
手にはまだ木の棒が握られている。初期装備か。
「『どう、と言われても』という顔をしているな。財布ならまだ分からないが、ほとんどの物は適当に段ボール箱にでも詰められて事務室の前に放置してあるだろう。持っていく時にも特に確認もされやしない。『どうせ取りに来ない』と考えているんだろうな。落し物だから、仮に誰かが持ち出しても苦情の入るわけでもない」
山岸はビニール袋から緑茶のペットボトルを出した。
木の棒を持ったまま器用にフタを開ける。
「そんな状態に憤った人間がかつて立ち上げたのが『忘れ物センター』だよ。だが、今やその存在を知る者は学内にはほとんどいない。にも関わらず、忘れ物・落し物の収集活動はずっと続けられていてね。おかげでセンターが出来る前よりも、落し物が見つからないことが増えたというのだから、困ったものだ」
山岸はやれやれた言った感じで肩をすくめる。
「やれやれじゃない。とにかくそんなセンターがあるっていうなら、とりあえずそこに連れて行ってくれ」
「まぁ、そう焦るな。そこにあるなら、まず誰かに持ち出されることはない。落し物としてきちんと管理してくれているはずだ。ただ管理はするが連絡はしてくれないのが欠点なんだけどね」
それじゃあ置き引きだろ!、という言葉が喉まで出かかったがぐっとこらえた。
「ただ、残念なことにこの後用事がある。これをやろう」
そういうと山岸はリング式のメモ帳に何かを書き殴ると、一枚ちぎってこちらに渡した。
忘れ物センター③へ
2018年1月8日月曜日
忘れ物センター①
人間、貧すれば鈍するとはよく言ったものである。
実際のところ俺の生活はここ数日の間、貧窮を極めていた。
身体はカロリーを求めることをやめ、むしろ機能を低下させることに注力することに決めたようである。四肢は重くまるで死者のように蠢くことしか出来ない有様であった。
「まぁ元々、ゾンビみたいな生活を送っていたんだ。大して変わらないだろう」
と言って、山岸が目の前でコンビニのホットスナックを頬張る。
殺意が沸く前に、口から垂れんばかりの脂を見て、俺の口から泉のように唾液が湧き出てくる。
「こんな無残な男を前にして、奢ってやろうという気はないのか!お前はそれでも心を持った人間なのか!お前こそ人の心を失った悲しいサイボーグなんじゃないか!」
俺はがなりたてた。
道行く人々の視線がこちらに集中する。
悔しさからか、侘しさからか、俺の目からは涙がこぼれそうであった。心の汗である。
「奢ったり、金を貸したり、そういうのは主義に反してね」
山岸はウエットティッシュで口を拭ったが、口の周りは依然脂で光り輝いていた。
「財布を落としたぐらい、厄を落としたとでも思うしかないね。もしかすると大学に住むと言われる東山の妖精が持って行ってしまったのかもしれない」
「ファンタジーで慰めるな!!そもそもそれは慰めているのか、いや、誰が言ってるんだ、それは!」
先週末のことであった。
珍しく大学に出てきた俺は自分を褒め讃え、褒美として学食でカレーを食べさせてやることにした。カレー程度と侮るな。カツカレーである。
注文を終えカツカレーを受け取り、会計に立つ。
その時何か嫌な違和感を感じた。
普段後ろポケットに感じている圧迫感が……ない。
脂汗をかきながら右手で自分の尻を撫で回す。
が、ない。
俺の使い込まれた長財布はどこかへ旅立っていた。
そこからカツカレーがどうなったかについては、ここでは話すのも躊躇われるから聞かないでおいてくれ。
山岸に対する俺の語気はだんだんと荒さを増して行く。
その勢いに圧されたのか、俺の目の血走りに本能的なエマージェンシーを感じたのか、珍しく山岸が少したじろぐ。
「まぁ、それだけ大学中を探し回って、事務室を訪ね歩いたのなら、もう望みはだいぶ薄いんじゃないか」
山岸はちょっと距離を取りつつそう言った。
俺の噛み締めた歯の間から、嘆息にも咆哮にもにた呻き声が漏れる。
「あ、そういえば」
山岸が思いついたように言った。手には反撃のためか、木の棒が握られていた。
「最後の希望になるか分からんが、一つ心当たりがある」
俺は噛み付くのをすんでのところで止めた。
忘れ物センター②へ
実際のところ俺の生活はここ数日の間、貧窮を極めていた。
身体はカロリーを求めることをやめ、むしろ機能を低下させることに注力することに決めたようである。四肢は重くまるで死者のように蠢くことしか出来ない有様であった。
「まぁ元々、ゾンビみたいな生活を送っていたんだ。大して変わらないだろう」
と言って、山岸が目の前でコンビニのホットスナックを頬張る。
殺意が沸く前に、口から垂れんばかりの脂を見て、俺の口から泉のように唾液が湧き出てくる。
「こんな無残な男を前にして、奢ってやろうという気はないのか!お前はそれでも心を持った人間なのか!お前こそ人の心を失った悲しいサイボーグなんじゃないか!」
俺はがなりたてた。
道行く人々の視線がこちらに集中する。
悔しさからか、侘しさからか、俺の目からは涙がこぼれそうであった。心の汗である。
「奢ったり、金を貸したり、そういうのは主義に反してね」
山岸はウエットティッシュで口を拭ったが、口の周りは依然脂で光り輝いていた。
「財布を落としたぐらい、厄を落としたとでも思うしかないね。もしかすると大学に住むと言われる東山の妖精が持って行ってしまったのかもしれない」
「ファンタジーで慰めるな!!そもそもそれは慰めているのか、いや、誰が言ってるんだ、それは!」
先週末のことであった。
珍しく大学に出てきた俺は自分を褒め讃え、褒美として学食でカレーを食べさせてやることにした。カレー程度と侮るな。カツカレーである。
注文を終えカツカレーを受け取り、会計に立つ。
その時何か嫌な違和感を感じた。
普段後ろポケットに感じている圧迫感が……ない。
脂汗をかきながら右手で自分の尻を撫で回す。
が、ない。
俺の使い込まれた長財布はどこかへ旅立っていた。
そこからカツカレーがどうなったかについては、ここでは話すのも躊躇われるから聞かないでおいてくれ。
山岸に対する俺の語気はだんだんと荒さを増して行く。
その勢いに圧されたのか、俺の目の血走りに本能的なエマージェンシーを感じたのか、珍しく山岸が少したじろぐ。
「まぁ、それだけ大学中を探し回って、事務室を訪ね歩いたのなら、もう望みはだいぶ薄いんじゃないか」
山岸はちょっと距離を取りつつそう言った。
俺の噛み締めた歯の間から、嘆息にも咆哮にもにた呻き声が漏れる。
「あ、そういえば」
山岸が思いついたように言った。手には反撃のためか、木の棒が握られていた。
「最後の希望になるか分からんが、一つ心当たりがある」
俺は噛み付くのをすんでのところで止めた。
忘れ物センター②へ
仏像でバズった先輩のトークライブレポート
先日、先輩が仏像でバズった。
Twitterに投稿した一つの画像、それが話題を呼んでバズりにバズり、最終的にはテレビ出演(VTR)も果たしたそうな。
その先輩こと「つるま」氏が今回トークライブをやるらしいということで、良い後輩代表として馳せ参じてきた次第である。
イベント名は『「謎の大観音」ネット大捜索劇の舞台裏! 渦中の第一投稿者「つるま」さんが激白』である。
CM前のバラエティかと思ったが、内容が大体分かる良いタイトルだと思うことにした。
風の吹きすさぶ矢場町を歩き会場を探す。
なんとか看板を見つけ地下に降りて行く。
降りて行く途中で黒いマスクをつけた(おそらくマスクの下は)強面のお兄さんとすれ違う。
「あれ?客層違くない??」と思っていると、ギターの音まで聞こえてきた。いよいよ雲行きが怪しい。何か嫌な予感がする(スターウォーズ)。
そんなこんなで階段で2,3回の昇降運動をしているうちに、どうやら奥にもう一つ店舗があるらしい、ということがわかった。
なんとか『ボクモ』にたどり着いた。
店内は素晴らしくおしゃれで、僕が入っていいのかと一瞬躊躇したが、怖いお兄さんはいなさそうなので受付を終え席に着く。
今回、対談相手は名古屋通なら皆が知っている、知らない人も書店で本だけはちょっと知っている大竹敏之氏である。名古屋文化研究の最前線にいる方である。
イベントは、くだんの画像から始まる。
謎の巨大観音像、押し寄せる情報ツイート、伸びるリツイート数。
この流れについてはウェブニュースで色々と取り上げられていたので知ってる人が多いと思うので、詳しくは説明しないが、寄せられた情報が面白い。
観音のデザインや持っている三又槍の意味合いから始まり、土台の石垣、写真に写った人々の服装や、帽子の種類、袈裟の意匠、更には写真の植生や季節...etc。
ネットらしく「みんなが口々に知ってる事を披露する」ゲームが始まった!、と当時バズった流れを見ながら思っていた僕だったが、これもつるま氏の術のうちだったらしい。
ツイートには確かに「仏像、着物、植物、建築などのマニアの方のご意見、情報お待ちしてます。」と書かれている。この一文が大きなうねりを産んだ要因だったのかもしれない。
様々な情報が飛び交い、寄せられる情報が何ループかしたあたりで、一冊の本についての情報が寄せられ、最終的にはそれから青島の観音像にたどり着くこととなる。
NHKを始め、「集合知」という言葉で紹介される今回の捜索劇であるが、話を聞いていると微妙に本質から外れている気がする。
実際のところ、仏像の特定に至ったのは数本の情報の連鎖によるものであり、多くの情報を加算して、というよりも、「数々の情報は結果的に正解であった」というような感じだ。集合感はそんなにない。裏づけにはなったかもしれないが。
しかし、ネットでみんなが情報を届けた結果、このビッグウェーブに繋がったのだから、間違いでもないのだろうか。
それにしてもネットで検索しても何の情報も見つからなかった観音像が、SNSを通しての一次情報から特定される、というのは面白い。
ネットには全ての情報が揃っているように思い込みがちだが、その隙間を埋めるものを見た気がした。
(つるま氏のコミカルなトークと、大竹氏の耳触りの良い合いの手で会場は何度も湧いた)
しかしネットどころか、文献的にも情報の残っていないもの、こと「コンクリート大仏」
というジャンルにおいてはそうしたものが数多いそうだ。
一時期、全国的に多くのコンクリート大仏が作られたものの、いまではコンクリート製は偽物(これはつるま氏のツイートから)という風潮などから脇に追いやられ、その大きさから壊すに壊せず忘れ去られていったものも多い。
なんだろうか「時代に取り残されたもの」「時代の忘れ物」といった感じだ。
大竹氏やつるま氏はそうしたコンクリート大仏を始めとしたコンクリート像の記録を残す活動をしている。
年代的にも、時代の忘れ物が永遠に忘れ去られる前に何か手立ての打てる、その最後の時期が来ているのかもしれない。
元々「ネットによって得られた情報」についてのイベントであったはずだが、イベントを通して逆に「自らの足で稼ぐ情報の重要さ」について学んだ気がした。
そんなことを思いながら、店を後にした。
となりの店もイベントが終わったのか、強面の人々が出てくるところだったので、足早にして逃げるようにビルを去った。
Twitterに投稿した一つの画像、それが話題を呼んでバズりにバズり、最終的にはテレビ出演(VTR)も果たしたそうな。
その先輩こと「つるま」氏が今回トークライブをやるらしいということで、良い後輩代表として馳せ参じてきた次第である。
イベント名は『「謎の大観音」ネット大捜索劇の舞台裏! 渦中の第一投稿者「つるま」さんが激白』である。
CM前のバラエティかと思ったが、内容が大体分かる良いタイトルだと思うことにした。
風の吹きすさぶ矢場町を歩き会場を探す。
なんとか看板を見つけ地下に降りて行く。
降りて行く途中で黒いマスクをつけた(おそらくマスクの下は)強面のお兄さんとすれ違う。
「あれ?客層違くない??」と思っていると、ギターの音まで聞こえてきた。いよいよ雲行きが怪しい。何か嫌な予感がする(スターウォーズ)。
そんなこんなで階段で2,3回の昇降運動をしているうちに、どうやら奥にもう一つ店舗があるらしい、ということがわかった。
なんとか『ボクモ』にたどり着いた。
店内は素晴らしくおしゃれで、僕が入っていいのかと一瞬躊躇したが、怖いお兄さんはいなさそうなので受付を終え席に着く。
今回、対談相手は名古屋通なら皆が知っている、知らない人も書店で本だけはちょっと知っている大竹敏之氏である。名古屋文化研究の最前線にいる方である。
イベントは、くだんの画像から始まる。
謎の巨大観音像、押し寄せる情報ツイート、伸びるリツイート数。
この流れについてはウェブニュースで色々と取り上げられていたので知ってる人が多いと思うので、詳しくは説明しないが、寄せられた情報が面白い。
観音のデザインや持っている三又槍の意味合いから始まり、土台の石垣、写真に写った人々の服装や、帽子の種類、袈裟の意匠、更には写真の植生や季節...etc。
ネットらしく「みんなが口々に知ってる事を披露する」ゲームが始まった!、と当時バズった流れを見ながら思っていた僕だったが、これもつるま氏の術のうちだったらしい。
ツイートには確かに「仏像、着物、植物、建築などのマニアの方のご意見、情報お待ちしてます。」と書かれている。この一文が大きなうねりを産んだ要因だったのかもしれない。
様々な情報が飛び交い、寄せられる情報が何ループかしたあたりで、一冊の本についての情報が寄せられ、最終的にはそれから青島の観音像にたどり着くこととなる。
NHKを始め、「集合知」という言葉で紹介される今回の捜索劇であるが、話を聞いていると微妙に本質から外れている気がする。
実際のところ、仏像の特定に至ったのは数本の情報の連鎖によるものであり、多くの情報を加算して、というよりも、「数々の情報は結果的に正解であった」というような感じだ。集合感はそんなにない。裏づけにはなったかもしれないが。
しかし、ネットでみんなが情報を届けた結果、このビッグウェーブに繋がったのだから、間違いでもないのだろうか。
それにしてもネットで検索しても何の情報も見つからなかった観音像が、SNSを通しての一次情報から特定される、というのは面白い。
ネットには全ての情報が揃っているように思い込みがちだが、その隙間を埋めるものを見た気がした。
(つるま氏のコミカルなトークと、大竹氏の耳触りの良い合いの手で会場は何度も湧いた)
しかしネットどころか、文献的にも情報の残っていないもの、こと「コンクリート大仏」
というジャンルにおいてはそうしたものが数多いそうだ。
一時期、全国的に多くのコンクリート大仏が作られたものの、いまではコンクリート製は偽物(これはつるま氏のツイートから)という風潮などから脇に追いやられ、その大きさから壊すに壊せず忘れ去られていったものも多い。
なんだろうか「時代に取り残されたもの」「時代の忘れ物」といった感じだ。
大竹氏やつるま氏はそうしたコンクリート大仏を始めとしたコンクリート像の記録を残す活動をしている。
年代的にも、時代の忘れ物が永遠に忘れ去られる前に何か手立ての打てる、その最後の時期が来ているのかもしれない。
元々「ネットによって得られた情報」についてのイベントであったはずだが、イベントを通して逆に「自らの足で稼ぐ情報の重要さ」について学んだ気がした。
そんなことを思いながら、店を後にした。
となりの店もイベントが終わったのか、強面の人々が出てくるところだったので、足早にして逃げるようにビルを去った。
2018年1月5日金曜日
板チョコ
コンビニやスーパーでチョコレートを買おう、と思った時に何を買うか、というのは重要な問題である。ここで買う種類によって性格が分かると言っても過言ではない。
僕が選ぶのは板チョコである。故に僕は質実剛健な男だと導ける。
理由は自分で考えてくれ。ここは学校じゃないんだ、かといって遊び場でもない。
いいやつばかりじゃないし、悪いやつばかりである。
そんな生粋の板チョコ派の僕を近年悩ます事がある。
板チョコが軽い!!板チョコが軽い!!!
なんなんだ!!この満足感のない重量は!!!
板チョコを製造する菓子メーカーがこぞってチョコレートを小さくしている。
このサイズでは満足などできるものかっ!
しかし、より大きいサイズの板チョコは高い。
あの最近OLに人気のチョコは特に高い。
大体「形の違いで色々な味わい」などあるものか。そもそも板チョコなんて買ってる奴に微細な違いなど分かろうはずもないだろうが、常識で考えろ。
ウォンカチョコは板チョコかどうかも疑わしい。ビレバンも近くにない。
ガーナはどうしたんだ。
振るとカタカタ鳴るぞ。箱ごし手に悲しいバイブレーションが伝わってくる。
いつからそんなにスマートになったんだ。
そもそもガーナの暴力的な甘みはなんなんだ。美味いけど。
meijiの板チョコはケースがない分スマートなボディがむき出しになってしまっている。
肉をつけろ。歩留が低すぎる。あっという間に食べ終わる。
味は相変わらずバランスが取れてて一番食べやすい。
Morinagaはそもそも売ってない。味がわからない。
文字の書体が気に入らない。デカい。そんなに美味しそうじゃない。
見ないから細くなったかも分からない。細くないならもっと売ってくれ。
細くなったならロゴも小さくしてくれ。
バリューブランドの板チョコについては言うことがない。
プライドを感じないプラスチック包装を裂くが、中のチョコレートがむちゃくちゃ出しづらい。
裂いてるから長辺方向に切れているが、そもそも板チョコは短辺方向に切るものだろう。だから出しにくいんだ。
こんな感じではもう100円で板チョコを買って満足する時代は遠くなりにけり。
仕方がないから、意外と安いコアラのマーチを食べている。
追伸 :
きのこの山とたけのこの里のアソートパックがあるのは周知だと思う。
こないだ、大きな袋に「たけのこの里」だけの小パックが入っているアソートがあった。
大きなパッケージにたけのこだけが並んでいて、とても寂しい気持ちになった。
だいぶ排他的な里なのだろう。
僕が選ぶのは板チョコである。故に僕は質実剛健な男だと導ける。
理由は自分で考えてくれ。ここは学校じゃないんだ、かといって遊び場でもない。
いいやつばかりじゃないし、悪いやつばかりである。
そんな生粋の板チョコ派の僕を近年悩ます事がある。
板チョコが軽い!!板チョコが軽い!!!
なんなんだ!!この満足感のない重量は!!!
板チョコを製造する菓子メーカーがこぞってチョコレートを小さくしている。
このサイズでは満足などできるものかっ!
しかし、より大きいサイズの板チョコは高い。
あの最近OLに人気のチョコは特に高い。
大体「形の違いで色々な味わい」などあるものか。そもそも板チョコなんて買ってる奴に微細な違いなど分かろうはずもないだろうが、常識で考えろ。
ウォンカチョコは板チョコかどうかも疑わしい。ビレバンも近くにない。
ガーナはどうしたんだ。
振るとカタカタ鳴るぞ。箱ごし手に悲しいバイブレーションが伝わってくる。
いつからそんなにスマートになったんだ。
そもそもガーナの暴力的な甘みはなんなんだ。美味いけど。
meijiの板チョコはケースがない分スマートなボディがむき出しになってしまっている。
肉をつけろ。歩留が低すぎる。あっという間に食べ終わる。
味は相変わらずバランスが取れてて一番食べやすい。
Morinagaはそもそも売ってない。味がわからない。
文字の書体が気に入らない。デカい。そんなに美味しそうじゃない。
見ないから細くなったかも分からない。細くないならもっと売ってくれ。
細くなったならロゴも小さくしてくれ。
バリューブランドの板チョコについては言うことがない。
プライドを感じないプラスチック包装を裂くが、中のチョコレートがむちゃくちゃ出しづらい。
裂いてるから長辺方向に切れているが、そもそも板チョコは短辺方向に切るものだろう。だから出しにくいんだ。
こんな感じではもう100円で板チョコを買って満足する時代は遠くなりにけり。
仕方がないから、意外と安いコアラのマーチを食べている。
追伸 :
きのこの山とたけのこの里のアソートパックがあるのは周知だと思う。
こないだ、大きな袋に「たけのこの里」だけの小パックが入っているアソートがあった。
大きなパッケージにたけのこだけが並んでいて、とても寂しい気持ちになった。
だいぶ排他的な里なのだろう。
2018年1月4日木曜日
休み明けの憂鬱
冬休みが終わった。
1/3までの休みなので、正月休みとか年末年始休みという方が正確には違いないのだが、冬休みと呼ぶことで子供心を体に留めている。
1/4の今日から研究室に来ているのだが、まぁやる気が出ない。
こういう時に嫌に真面目になって自己嫌悪などしてしまうのは良くない。
真面目なのは良いことだが、同時に視界が狭まり目の前の物しか見えなくなることも多い。
一回、肩の力を抜いて傍観してみれば、みんなやる気もなくぽつぽつとやっている中で、一人焦って苦しんでいる、ということが起こりがちである。
大体誰だって休み明けは調子が出ないものなのだ。
ただその程度に多少の差がある。
おそらく僕はその「調子の出なさ」が人一倍酷い方だと思う。
これを引きずり長引かせると色々とまずいことになるので、上手くエンジンを温めなければならない。
大体、高馬力のエンジンほど長く放置したらかかりにくいものなのだ。
僕は機械に詳しくないから、想像で言っているが、たぶんそうだ。
というわけで忘れた習慣を少しずつ身体の記憶から呼び覚まさねばならぬ。
とりあえず嫌々でも研究室に出て来た。
もうこの時点で僕は自分のことを素晴らしいやつだと思ってやることにした。
年末年始の間、ただ餅を食べてはごろごろするだけの生活をしていた。
「我々の体は食べたもので出来ている」とはよく言ったもので、なるほど僕の体は餅のようになっていた。腹もよく伸びる。
新生児の体重程度肉は増えたような気がする。
その身重の体を引きずるようにして来たのだから褒められて然るべきではないか。
と思い、あとはコーヒーでも飲みながらだらだらして、最低限 of 最低限のことだけをこなしてきた。まぁそれでも2,3はやるべき事をやって、あとは適当にやりたい事をやっていたから、今日は行った価値があったような気がする。
それに、今日を踏まえて明日は多少体も動きやすくなっているはずだ。
人の体はそういう風に出来ている。少なくとも僕はそうだ。
やはり行った価値があるなぁ、と思いながらコーヒーをずびびと飲む。
さて、自分で「価値がある」「意義がある」と思えることがやはり重要で、人は価値のないことをやっていられない。
昔の牢獄で、「穴を掘り、ある程度の大きさになったら、その穴を埋める」という罰が行われていたという。これに従事した囚人は気が狂ったと言われている。
何か「まぁ意味はなくないよな」と自分をごまかしつつ動かしていくのが良い気がする。
結果として色々とやれているのだ、嘘も方便である。
そんな感じで今年は上手く自分の身体を操って生き延びていこうと思う。
あとは餅のような身体に焼きを入れ、やきもちの一つも妬いて貰えるような人間を目指そうか。
追伸 :
ちなみに友人は一人で砲丸を投げ、グラウンドに自分で空けた穴を埋めて、また投げて、と繰り返していたところ、たまらなく辛くなって陸上部を辞めたそうだ。当たり前だと思う。
1/3までの休みなので、正月休みとか年末年始休みという方が正確には違いないのだが、冬休みと呼ぶことで子供心を体に留めている。
1/4の今日から研究室に来ているのだが、まぁやる気が出ない。
こういう時に嫌に真面目になって自己嫌悪などしてしまうのは良くない。
真面目なのは良いことだが、同時に視界が狭まり目の前の物しか見えなくなることも多い。
一回、肩の力を抜いて傍観してみれば、みんなやる気もなくぽつぽつとやっている中で、一人焦って苦しんでいる、ということが起こりがちである。
大体誰だって休み明けは調子が出ないものなのだ。
ただその程度に多少の差がある。
おそらく僕はその「調子の出なさ」が人一倍酷い方だと思う。
これを引きずり長引かせると色々とまずいことになるので、上手くエンジンを温めなければならない。
大体、高馬力のエンジンほど長く放置したらかかりにくいものなのだ。
僕は機械に詳しくないから、想像で言っているが、たぶんそうだ。
というわけで忘れた習慣を少しずつ身体の記憶から呼び覚まさねばならぬ。
とりあえず嫌々でも研究室に出て来た。
もうこの時点で僕は自分のことを素晴らしいやつだと思ってやることにした。
年末年始の間、ただ餅を食べてはごろごろするだけの生活をしていた。
「我々の体は食べたもので出来ている」とはよく言ったもので、なるほど僕の体は餅のようになっていた。腹もよく伸びる。
新生児の体重程度肉は増えたような気がする。
その身重の体を引きずるようにして来たのだから褒められて然るべきではないか。
と思い、あとはコーヒーでも飲みながらだらだらして、最低限 of 最低限のことだけをこなしてきた。まぁそれでも2,3はやるべき事をやって、あとは適当にやりたい事をやっていたから、今日は行った価値があったような気がする。
それに、今日を踏まえて明日は多少体も動きやすくなっているはずだ。
人の体はそういう風に出来ている。少なくとも僕はそうだ。
やはり行った価値があるなぁ、と思いながらコーヒーをずびびと飲む。
さて、自分で「価値がある」「意義がある」と思えることがやはり重要で、人は価値のないことをやっていられない。
昔の牢獄で、「穴を掘り、ある程度の大きさになったら、その穴を埋める」という罰が行われていたという。これに従事した囚人は気が狂ったと言われている。
何か「まぁ意味はなくないよな」と自分をごまかしつつ動かしていくのが良い気がする。
結果として色々とやれているのだ、嘘も方便である。
そんな感じで今年は上手く自分の身体を操って生き延びていこうと思う。
あとは餅のような身体に焼きを入れ、やきもちの一つも妬いて貰えるような人間を目指そうか。
追伸 :
ちなみに友人は一人で砲丸を投げ、グラウンドに自分で空けた穴を埋めて、また投げて、と繰り返していたところ、たまらなく辛くなって陸上部を辞めたそうだ。当たり前だと思う。
2018年1月3日水曜日
スターウォーズをあまり知らないけれど、スターウォーズ Ep.8を観てきた
タイトルの通りである。
スターウォーズを知らないとは言っても、全く観たことがないわけではない。
一作品だけ、しかも映画館で観たことがある。『ローグ・ワン』である。
これはスターウォーズ好きに驚愕と困惑を与えるらしい。
僕がその時に持っていたスターウォーズについての知識といえば、「ダースベイダは悪い奴!」「主人公はルーク」「レイア姫のセクシーシーンは海外の少年たちには刺激が強いらしい」「ヨーダは緑色」くらいしかなかったのだが、息もつかせぬ演出にぐいぐい引き込まれていった。
その時に初めて「スターウォーズってこんなに面白いんだ!!」と感動したのだ。
そのため今回はスターウォーズ Ep.8を観に行ってきた、という次第である。
Ep. 8というくらいなので、おそらく8作目なのだと思う。
最初にあらすじ?みたいなのが宇宙をバックに流れるシーンがあったが、見慣れない単語ばかりであまり頭に入ってこなかった。どうやらどこかの共和国が壊されたらしい。
主人公はルークと思いきや、力強いイケメンな女性が主人公だった。
ミラジョボビッチとか、そういうイケメン感がある。
どうやらこの女性はルークを探しにきたらしい、というところから物語が始まる。
ダースベイダーは出てこなかったが、ポスト・ダースベイダーみたいな男が出てきた。
「ジェダイ」というのが伝説的に強い、というのはローグワンで学習済みである。
どうやら今回はそのジェダイをレジスタンスがなんとか味方にしたい、という話らしい。
そんな曖昧な理解で作品を見ていくのだが、やはり面白い。
静寂から爆発、鬱屈から爽快。
コントラストが巧みに変えられてゆき、終始わくわくしっぱなしであった。
ここまでの流れを詳しく知らないため、何がネタバレになるか分からない。
そのためここで筆を置かせてもらう。
「スターウォーズってシリーズ多すぎてよくわかんない!何から見ればいいの!?」
という方が多いと思う。
僕はこう答える。
「映画館でやってるやつを観よ」
ルーカスフィルムはきっとあなたを興奮させてくれる。
それから昔のエピソードを観るのも悪くないはずだ。
というわけで僕も前のエピソードを観ようと思います。
スターウォーズを知らないとは言っても、全く観たことがないわけではない。
一作品だけ、しかも映画館で観たことがある。『ローグ・ワン』である。
これはスターウォーズ好きに驚愕と困惑を与えるらしい。
僕がその時に持っていたスターウォーズについての知識といえば、「ダースベイダは悪い奴!」「主人公はルーク」「レイア姫のセクシーシーンは海外の少年たちには刺激が強いらしい」「ヨーダは緑色」くらいしかなかったのだが、息もつかせぬ演出にぐいぐい引き込まれていった。
その時に初めて「スターウォーズってこんなに面白いんだ!!」と感動したのだ。
そのため今回はスターウォーズ Ep.8を観に行ってきた、という次第である。
Ep. 8というくらいなので、おそらく8作目なのだと思う。
最初にあらすじ?みたいなのが宇宙をバックに流れるシーンがあったが、見慣れない単語ばかりであまり頭に入ってこなかった。どうやらどこかの共和国が壊されたらしい。
主人公はルークと思いきや、力強いイケメンな女性が主人公だった。
ミラジョボビッチとか、そういうイケメン感がある。
どうやらこの女性はルークを探しにきたらしい、というところから物語が始まる。
ダースベイダーは出てこなかったが、ポスト・ダースベイダーみたいな男が出てきた。
「ジェダイ」というのが伝説的に強い、というのはローグワンで学習済みである。
どうやら今回はそのジェダイをレジスタンスがなんとか味方にしたい、という話らしい。
そんな曖昧な理解で作品を見ていくのだが、やはり面白い。
静寂から爆発、鬱屈から爽快。
コントラストが巧みに変えられてゆき、終始わくわくしっぱなしであった。
ここまでの流れを詳しく知らないため、何がネタバレになるか分からない。
そのためここで筆を置かせてもらう。
「スターウォーズってシリーズ多すぎてよくわかんない!何から見ればいいの!?」
という方が多いと思う。
僕はこう答える。
「映画館でやってるやつを観よ」
ルーカスフィルムはきっとあなたを興奮させてくれる。
それから昔のエピソードを観るのも悪くないはずだ。
というわけで僕も前のエピソードを観ようと思います。
2018年1月2日火曜日
2018年 正月
紅白を途中でやめて、Abemaの録画を布団でぬくぬく見ていたらいつの間にか年が明けていた。明けたので寝た。
中高までは友達と近所の寺社仏閣を回っていた。
信心深い日本人ゆえである。巫女さん目当てなどでは決してない。
しかし24にもなると布団が恋しい。
などと2018年の初めから年寄りじみた話から初めて申し訳ない。
こんな年越しであったが、正月は毎年の事ながらハキハキと働かされる羽目になる。
元旦、祖母を連れて家族で大須観音を詣でる。
そういえば元旦とは元日の朝を指すらしく、元旦の朝とは重言だそうだ。
世の中にはそうしたトラップが多くて、少し間違えると急に愚か者に転落するから、一言一句にびくびくしてとても会話が出来ない。沈黙は金とはよく言ったものである。
ちなみに引いた御神籤は去年と同じ番号だった。
今年の運勢は2017年と同じである。ループしている。
初詣の後は祖母の家で揚げ物を運ぶ重要な任務に就く。
祖母くらいの世代だと、普段節約した分をこういう目出度い行事に注ぎがちである。
そのために用意された大量の鶏肉とエビが、次から次へと油に投げ込まれ、そうして出来た大量の揚げ物が机に運ばれていく。
その最後の段階の「運び」を担当するのが僕である。
祖母揚げ物亭のホール担当である。
が、なかなか他の親戚がやってこない。
仕方がないので揚げたてのエビを食べる。
想像以上に身がぷりぷりとしていてなかなか美味だ。
大皿の半分ほど食べたところで親戚がやってきたため、エビフライを勧めたところ、なぜか親戚はエビを二度揚げしに行った。
なるほど、やけにぷりぷりな訳である。急にお腹が心配になってきた。
酒を注ぎ、寿司を食べ、揚げ物を運び、揚げ物を食べる。
そうしているうちに正月は過ぎていく。
将来、僕が(万が一)家庭を築くことがあれば寝正月を家訓にしたいと思う。
正月から駆け回る日々にアディオス。シエスタにこんにちは。
2018年は十分に寝たいと思う。よろしく頼みたい。
追伸 :
従姉妹に男子が産まれたのでお年玉を渡した。
名実ともにおじさんとなっていく自分に焦りを覚える。
子供の名前は覚えられない。おじさんなので。
中高までは友達と近所の寺社仏閣を回っていた。
信心深い日本人ゆえである。巫女さん目当てなどでは決してない。
しかし24にもなると布団が恋しい。
などと2018年の初めから年寄りじみた話から初めて申し訳ない。
こんな年越しであったが、正月は毎年の事ながらハキハキと働かされる羽目になる。
元旦、祖母を連れて家族で大須観音を詣でる。
そういえば元旦とは元日の朝を指すらしく、元旦の朝とは重言だそうだ。
世の中にはそうしたトラップが多くて、少し間違えると急に愚か者に転落するから、一言一句にびくびくしてとても会話が出来ない。沈黙は金とはよく言ったものである。
ちなみに引いた御神籤は去年と同じ番号だった。
今年の運勢は2017年と同じである。ループしている。
初詣の後は祖母の家で揚げ物を運ぶ重要な任務に就く。
祖母くらいの世代だと、普段節約した分をこういう目出度い行事に注ぎがちである。
そのために用意された大量の鶏肉とエビが、次から次へと油に投げ込まれ、そうして出来た大量の揚げ物が机に運ばれていく。
その最後の段階の「運び」を担当するのが僕である。
祖母揚げ物亭のホール担当である。
が、なかなか他の親戚がやってこない。
仕方がないので揚げたてのエビを食べる。
想像以上に身がぷりぷりとしていてなかなか美味だ。
大皿の半分ほど食べたところで親戚がやってきたため、エビフライを勧めたところ、なぜか親戚はエビを二度揚げしに行った。
なるほど、やけにぷりぷりな訳である。急にお腹が心配になってきた。
酒を注ぎ、寿司を食べ、揚げ物を運び、揚げ物を食べる。
そうしているうちに正月は過ぎていく。
将来、僕が(万が一)家庭を築くことがあれば寝正月を家訓にしたいと思う。
正月から駆け回る日々にアディオス。シエスタにこんにちは。
2018年は十分に寝たいと思う。よろしく頼みたい。
追伸 :
従姉妹に男子が産まれたのでお年玉を渡した。
名実ともにおじさんとなっていく自分に焦りを覚える。
子供の名前は覚えられない。おじさんなので。
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