2016年3月17日木曜日

ラウンジ 3/16 昼

「孤食だなんていうが」

僕が来る前にすでに食事を終えていただろう老人は、誰にともなくボソリと言った。

昼のラウンジ(ラウンジというには少しばかしくたびれ過ぎているが)には、時々昼飯を持ち込んで食べに来る。

その老人は窓際の一番端の席、柱時計の横で、もしゃもしゃとやっているのが常であった。

「一人の食事ってのは神聖なもんだ」

おそらく弁当を持ち込んだのだろう。老人の前には銀色の昔めいた箱が置いてあった。

「朝飯はこれから始まる1日のに思いをはせるんだ。炊きたての白米に焼鮭を一箸分のせて、口に運びながら、1日の思案をするんだな」

老人はここでいったんつぶやくのをやめ、魔法瓶から緑茶をこれまた銀色のコップに注ぎ、ズーズズッとすすった。
(つづく)

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